他にも大事なものが入っている袋ごと、かばんの中に見当たらない。オフィスで見た記憶はあるから、多分そこに忘れてきたのだろう。今から取りに行くのは大変だし、どうしたものか。経験的に、この種の重要なものを忘れると実に落ち着かないものだが、必ずうまく具合に想定したところにあるようだ。どういうのを忘れたことがあるかというと、財布とか、印鑑とか。

印鑑というのは、背広の内ポケットに入れることに決めているのだが、椅子の背に掛けたり、そこから背広をつかむときの角度で落ちてしまうことがあるらしい。実際に落ちた瞬間は見たことがないから想像なのだが。

財布を忘れるというのはかなり困ることになるので、わざわざそれを取りに、他に用事もないのにオフィスに引き返したことが何度かある。これも背広の内ポケットにあるはずなのに、ふと気付いたらなくなっているという怖いパターンだ。そういえば、財布を本当に落としたというのは一度しか記憶にない。これはかなり昔、下北沢の喫茶店で落としてしまったのだ。この時は、マスターが警察に届けてくれたので、無事私の手元に戻ってきた。その喫茶店も、今はない。