筆記用具は基本的に万年筆を使うことにしている。
人間は知的作業を行う動物である。知的作業ということは、あらゆるシーンでメンタルが絡んでくることになる。気持ちよい気分のときは捗るし、機嫌が悪いと何をしてもうまく行かない、といったことはよくあるだろう。それはメンタルという言葉で説明できる、ていうか、当たり前すぎて説明する必要もなさそうだが。
万年筆を使う理由は、気持ちよく字が書けるからだ。
いい気分で字を書けば、そこから何かヒントが生まれてくる。実はこの文章はエディタを使って直接パソコンに入力していたりするので、臨機応変なのだが、万年筆で書いているとキーボードを叩いているのとは違った感覚で違ったイメージが湧いてくるような気がする。
昔からモンブランの万年筆を使っている。
ご存知だと思うが、もちろん有名どころの一流ブランドである。ブランドというのは品質に裏付けられた価値だから、その点でも安心だが、ずっと使っているという経験からも安心感がある。最初に使ったモンブランの万年筆は、大学に進学するときに大叔父様がくれたものだ。講義のノートをそれで書いていたのだ。もう三十年以上も前のことだ。
その後、パソコンを使うようになって、あまり字を書かなくなった。数年前に、あるプロジェクトに参加して、私の役目が終わったときに、記念に万年筆を買った。もちろん、これもモンブランである。
昨年春頃に、この万年筆が壊れた。落としたときに軸の樹脂が割れてしまったのだ。
瞬間接着剤を使って騙しながら使っていたのだが、軸が微妙にずれたのと、ペン先にも歪みが出てしまったようでインクがうまく流れてくれなくなった。万年筆は精密機械だと実感した。修理に出したら確か2万円ほどかかったと思う。大事に使っていたのだが、それがまた落として割ってしまった。学習能力がないのかな。
ところで、今使っているのは、今年の春にプレゼントでもらった万年筆である。今回は教訓を生かして金属の軸のものを選んだ。これなら落としても割れることはないと考えたのだ。最初に使ったのも金属の軸だったから、最初に戻ったような感覚がある。
万年筆はペン先がなじむまではうまく書けないことがあるが、3か月程度使って、ようやくなじんだ感じがしてきたところである。