ロジカルシンキングというのはそんなに難しいのでしょうか

Yahoo!知恵袋のようなところの投稿が非論理的なのはまだいいとして、新聞記事だとか、国会議員の発言とか、知的レベルが高いはずの人の発言内容がロジカルでないというのはどういう現象なのだろうか。いや、Yahoo!知恵袋の知的レベルが低いと言っている訳ではないのだが。

最近の投稿だと、学歴社会は崩壊したというような主張があった。その根拠なのだが、テレビで慶應卒でアルバイトの人が紹介されていたというのである。慶應でも就職できないのが現状ならそれは学歴社会の崩壊だ、とでも言いたいのだろう。

ロジカルシンキングのできていない例として、帰納法を十分な検証なしに使うパターンがある。帰納法は事例から法則を導き出す手法なので、その事例が一般的であることを確かめるなど、適用に注意が必要である。特別な事例だけ使って、だから一般的にもそうだ、と主張されても困る。

先の例では、慶應卒の人の大部分が就職できないというような状況でもあればともかく、たった一例をもって全体もそうだという結論を導いている。これは根拠のない汎化とでも言うべきもので、そもそも論理的に全く成立し得ない。帰納法以前の問題だ。残念ながら、Yahoo!知恵袋にはこの種の主張がよく見られるようだ。

しかし、実は先の例はそういう話ではないのである。その紹介されていたというテレビ番組を確認してみると、その慶應卒のアルバイトの人は、卒業したときに大手IT企業に就職していたことが分ったのだ。半年で退職して、それからアルバイトを始めたらしい。おそらくこの人は慶應卒という学歴をアピールして、楽々就職できたのだろう。根拠のない汎化すら成立していないのである。

このように隠された否定的条件があると騙されてしまうことがある。アルバイトをしているという表現から就職できなかったという結論を勝手に想像する人は多いかもしれない。

 

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